介護現場でのアドバイス ~「自分がして欲しくないことは利用者様にもしてはならない」に対して「黄金律」の観点から~

1.  実際にアドバイスを受けた場面

 

 嚥下が悪い方は食後薬をとろみと一緒に内服させることになっている。しかし、A職員が利用者様のおかずに混ぜて内服させている所をたまたま目撃した。きっと忙しかったのだろう。経験が浅い私は「別におかずと混ぜても良いのかな」と誤学習し、そのように内服させてしまった。

 一緒に食事介助をしていたB職員がその時私に対して「あなただったらおかずに薬を混ぜないでしょ?そうすることで、おかずが不味くなって食べたくないって思うからとろみと一緒に」という旨をアドバイスして下さった。「なるほど」と思ったが、同時に「素直じゃない人には効果あるの?」と思ってしまった。

 

2.  道徳「黄金律」に当てはめて考える

 

(1)黄金律とは

 

 さっきのアドバイスを聞いた時「黄金律じゃん!」と閃いた。大学の講義で学んだからだ。黄金律は聖書の中で語られている教えで2種類ある。

➀肯定的なもの

「あなたが人にしてもらいたいと思うことを人にしなさい」

➁否定的なもの

「あなたが人からして欲しくないことを人にしてはならない」

さっきのアドバイスは「➁否定的なもの」に当てはまる。また、孔子の格言「己の欲せざるところを人に施すなかれ」とも意味が共通する。つまり、黄金律は互いの価値観が一致していることが前提となる。

 

(2)黄金律の欠点 私とあなたの基準って?

 

A職員「あなただったらおかずに薬を混ぜたら食べたくなくなるでしょ?」

私「は?全く思わないし。何言ってんの?」

もし、私がこんなケンカ腰なひねくれ発言だったら、A職員はどう指導しただろう。こんな風に互いの価値観がズレてると黄金律でのアドバイスは通じない。

 

3.  より良い方法を模索して

 

(1)不適切な対応をした職員に理由を尋ねる

 

 穏やかに職員に理由を尋ねることが何よりも先決だと感じる。「穏やかに」がポイントで、同じ行動をしたとしてもその理由は千差万別だからである。

 母親の職場では、新人職員が挨拶をしないとのことだった。「挨拶するのが常識」と言っていたので理由を尋ねたか訊いたら「それはしてない」とのことだった。私は「常識か非常識か」で一纏めに括らないで、理由を尋ねて掘り下げて考えることが重要だと感じる。

・挨拶をしない家庭環境や性格なのか

・特定の人にだけ挨拶をしないのか、不特定多数の方にも挨拶をしないのか

・挨拶をするよう促しても挨拶をしないのか

・わだかまりや緊張などの心理的なものが、挨拶しないことに影響しているのか

・挨拶することの重要性を認識してないのか

など様々な観点から分析することによって、アプローチしやすくなるのではないか。挨拶「しない」のか挨拶「できない」のか見極めることが必要である。

 

(2)その方の「視点に近づいて」想像する

 

「視点に近づく」のがポイント。別の機会に述べる。

 

(3)中間管理職に相談する

 

 他職員数人に尋ねる方法もあるがやり方がバラバラで混乱したことが多かった。その場合は中間管理職に相談すると良い意見を下さったりする。

 

(4)ケアカンファレンス等全体会議で統一する

 

 SNSでもよく職員によってやり方が違う問題の投稿が散見される。最終的には、全体会議で統一するのがBetterな方法だと考える。どこまで統一するかは難しい。しかし、清潔かどうかや安全・安心かどうかという基準を設けた上で統一すれば客観的である。

 全体会議で決定後もすぐには馴染まない場合もあるので、その都度伝えたり何らかの形で意識づけすることが必要となる。いつの間にか風化する前に。

 

(5)公共マナー、法律・規則・ルール、社会的倫理と照らし合わせる

 

例え自分や相手が良くてもそれらと照らし合わせ絶えず妥当性があるのか考え抜く姿勢が求められる。

 

(6)教科書、本・雑誌を参考にする

 

自伝や体験談だけでなく裏付ける根拠が載っていればある程度の客観性がある。やはり、選書が肝心だと考える。その分野の王道や古典と称されるものの原著なら尚更良い。その業界をリードする方や第一人者の著作も参考になる。